R.I.P. DONALD "DUCK"DUNN そして史実
先日、STAX / VOLTの素晴らしいサウンドを支え続けた
僕が世界で一番好きなベーシスト、ドナルド’ダック’ダンがお亡くなりになりました。
ブルーノート東京の公演終了後だそうです。
心からお悔やみ申し上げます。
彼の偉大な功績についてはまた機会を改めて触れるとして
昨日、僕のマニア友人からご指摘があったことを一応まとめておきます。
というのは、BOOKER T.&THE MG’Sの最大のヒット曲
「GREEN ONIONS」のベースはダック・ダンではないのではないか?
ということなのです。
正解はダック・ダンではなく、ルイ・スタインベーグ(LEWIE STEINBERG)です。
ダック・ダンがMG’Sに加入するのは64年の11月です。
ということで、ダック・ダンがベースを弾いていないMG'Sの7インチは下記のものになります。
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STAX127 VOLT102 GRREN ONIONS 62/8
STAX131 JERRY BREAD 63/1
STAX134 HOME GROWN 63/2
STAX137 CHINESE CHECKERS 63/7
STAX142 MO' ONIONS 63/12
STAX153 SOUL DRESSING 64/7
STAX161 CAN'T BE STILL 64/11
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そのクロッパーと幼馴染だったダック・ダンは、クロッパーと「ロイヤル・スペース」というバンドを結成し、その後、このバンドは「マーキーズ」と進化します。
ダック・ダンは62年の夏にマーキーズを抜けるのですが、
61年の7月にリリースされたマーキーズの代表曲「LAST NIGHT」のベースはダック・ダンということになります。
64年1月にリリースされたヴァン・デルズの「THE HONEY DRIPPER」はダック・ダンのバンドで
レコーディングのリズム・セクションはクロッパーとアル・ジャクソンとダック・ダンです。
スタインバーグからダック・ダンへの交代を促したのは、当時かなりものを言える立場にあったクロッパーです。
「ルイは一緒に仕事をするのが少し難しいタイプだったんだ。とにかくダックが欲しかった。昔からの友達と一緒にやりたかったんだよ」
さて、ダック・ダンがMG'Sに加入して最初に行った録音が65年4月にリリースされたのが、
「BOOT-LEG」です(STAX169)。
このセッション、実は「バンマス」のブッカーTは参加しておりません(笑)。
アイザック・ヘイズです。
クロッパーはこう回想しています。
「本当はマーキーズのレコードなんだけど、MG'Sの名前で出すことにしたんだ。そのほうが売れると思ったからね」
当時のスタックスは白黒問わずいろんな人が出入りして和気あいあいとスタジオ・ワークに勤しんでいたので、
あんまりそういうのは関係なかったのかもしれません。
その「BOOT-LEG」はR&Bチャート10位を記録する久しぶりのMG'Sのヒット曲となりました。
レコーディング現場ではいろんなことがあります。
例えば、シュープリームスの代表曲「恋は焦らず」のべースは
実はジェームス・ジェマーソンではなく、キャロル・ケイだったり。
まぁ、そういうことを知るといろんな当時の状況がわかるので僕は楽しいのではありますが。
知らなくても、音楽の素晴らしさは変わりませんから、ね。
グリーン・オニオンズのレコードがたとえダック・ダンではなくとも
やっぱり彼の代表曲のひとつだと、僕は思います。
彼の弾く「あの」スタイルがやはりあまりにもインパクトがあるから。
だからラジオでこの曲が追悼でかかってもあんまし気にならないかも。
万が一、ロン・ウッドが亡くなった時にオリジナル・スタジオ・バージョンの「サティスファクション」がかかったら
異常なる違和感を感じるかもしれませんが(笑)。
*参考文献&CD
「スタックス・レコード物語」ロウ・ボウマン著(シンコー・ミュージック)
BOOKER T.&THE MG'S [TIME IS TIGHT] (STAX 3SCD-4424-2)
THE COMPLETE STAX VOLT SINGLES 1959-1968(ATRANTIC 7-82218-2)