近況報告55 吉祥寺 そして「のろ」

吉祥寺に「のろ」という呑み屋があります。
今年41年目(だよね?)
僕はここでしょっちゅうライブをやらせてもらって。
 
ここで一人呑みを教えてもらってね。
 
 
普通のサラリーマン生活を送っていた僕を、夜の混沌とした世界に誘ってくれたのがこの店。
 
ここに通う日々がいつも刺激的だった。
 
酔っぱらいを相手にして、それを上回る滅茶苦茶さを展開してたのが店主の加藤さん。
 
「木下よー!!だからお前はダメなんだよ!!」
 
って51歳の今でも言われてる(笑)。
 
かれこれもうお付き合いは四半世紀になる。すげぇな・・・・。
 
25年前の「のろ」にはそれこそ個性的な人たちがわんさか出入りしていて
 
ミュージシャン、絵描き、詩人、映画の人、役者、劇団員、ライター、雑貨屋さん、家具屋さん、
 
他の呑み屋の主人、料理人、スーパーの店長、中古車ディーラー・・・顔を思いだして書き始めたらきりがないや。
 
吉祥寺という場所、のろという場所に吸い寄せられて
自分の居場所を探し当てた人たちがそれこそごちゃごちゃとこの店を構成していた。
 
そんな場所に僕も入り込みたいと思って
 
それまでも何度かライブをやらせてもらったり、打ち合わせついでに対バン仲間と呑みには行ってはいたが、
 
とにかく一人であの常連だらけのカウンターに座りたい!!と意を決して地下のあのとても開けずらい重いドアを(というか閉まらない、か:笑)開けたのは確か26歳の時だと思う。いや、25だったかな?まぁどっちでもいい。
 
一人呑みなんかしたことないから、無茶苦茶緊張して
 
「すみません、加藤さん~。今日は一人で呑みに来たんですけど・・・
 
カウンター座ってもいいですか?」ってね。
 
その時の加藤さんの一言は未だに忘れないんですよ。
 
「おお~。なんだ一人で呑みに来たのか。おまえも偉くなったなぁ~」
 
ですよ(笑)。
 
どれだけ上から目線だよ、と思うでしょうが呑み屋はこれでいいのです。
 
何故ならそこは店主の城なんですから。
 
僕が好きな店はそんなとこばっかりです。
 
僕らは呑ませてもらってるのです。わざわざ金払ってね(笑)。
 
なんとか空いていたカウンター席に入れてもらい、ほどなく酔いも回ってきて周りの喧騒も心地よくなった頃
 
加藤さんがおもむろに僕の横に座って
 
「おっ、そろそろ俺も喉が渇いてきたからな。お前のボトルもらうぞー」
 
って。びっくりしましたよ。「お店の人がカウンター座って呑んじゃうんだ!」
 
その後、何度も通ううちに理解できましたが。
 
これが加藤さんのスタイルだって。
 
たまに隣に座ってくれないと寂しかったりしましたから(笑)。
 
 
一回、僕のボトル全部吞まれた時はさすがに怒りましたけど。
「加藤さん!!さすがにダメでしょ、それは!!
「あ、ごめんごめん木下ー。俺からおごるわもう一本」
「え、いいんですか?すみません、気を遣って頂いて・・・」
 
はい。話が本末転倒です・・・・。
 
まぁとにかくこの店ではいろいろありました。
 
僕の人生の大事なパーツがのろです。
 
 
*****************
 
この店で教わった・・・・というか教えてもらったんじゃなくて僕が勝手にそう理解してるだけかもしれないですが。
 
人との接し方の基本かな。
 
「コミュニケーション」って、
 
酒が入った時は特にですけど
 
やはり自分の意見や考え方を伝えたくなりがちですが
 
そのためには他人の考え方もちゃんと聞いて理解した上じゃないとダメなんだよ、
 
ということ。
 
双方があってこそのコミュニケーションですから。
 
加藤さん、ああ見えても人の話聞いてくれますからね。
 
いや、聞いてるふりだけかもしれない。
 
でもそれでもいいのですよ(笑)。それが大事。
 
 
とにかく一方的になっちゃダメで。
 
 
それをここで酒を通して学んだかなぁ。
 
いろんな職業や立場の人がごちゃ混ぜにいたのろですが、
 
これだけは言えるな。
 
店に居ついていた人はみんなそういうこと出来てた。
 
ややできない傾向にある人はみんなでフォローしてました。
「早く気がつけよ」って。
 
それでも無理な人は自然と消えていきました。いや、消してたかも(笑)。
 
酒呑みは基本的に人に対しておおらかじゃないとダメだと思ってます。
 
何故なら自分も酒絡みで人に迷惑をかけているときも絶対あるから。
 
それは「お互い様」なんですよね。
 
今日は終始聞く立場。
 
今は僕が喋っていいタイミング。
 
 
そんな駆け引きで人間関係が成り立ってると思うんですよね。
 
ああ、そういうことか・・・
 
書きながら思ったけど、僕が今の総理大臣を本気で嫌いなのは
 
そういう態度がひとかけらもないからなんだ、って。右左の話ではなくて「人として」嫌いなんですな。
 
 
ま、いいわそれは。また別の話。
 
相手に気を遣いつつ、なるべく本音をぶつけてみる呑み屋の社会。
 
「会社勤めじゃこれできないよな。自分にウソつかないでこうやって生きていけたらいいな」
 
なんて思い始めたのが結婚した直後の26歳の時(結婚相手からみたら最悪ですな)。
 
 
で、1年後には会社辞めちゃいました。
 
 
それから修行して、なんとか2年後に自分の店を開く運びになったのですが
 
1年かけてようやく希望の物件が見つかったのが、なんとのろの目と鼻の先・・・。
 
井の頭通りを渡って徒歩1分の物件。
 
 
「こりゃ恩を仇でかえすようなもんだ・・・。困ったなぁ」
 
と、加藤さんに詫びを入れに呑みに行ったら
 
「そうか!!よかったなぁ~。仲間が近くに増えてうれしいよ。お互い頑張ろうな!!」
 
って(涙)。
 
 
その日は肩の荷がおりてベロンベロンになった覚えがあります。
 
結局その場所で1995年から12年間店を営業したのですが、
 
井の頭通りと吉祥寺通りの交差点を中心円にした「いせや」~「のろ」~「ハバナムーン」の悪夢の循環ループにはまった人、数知れず。
 
筆頭はかの高田渡氏でありましたがね(笑)。
 
 
****************
 
僕がのろに出入りするようになってから25年くらい経ちました。
 
時代は変わります。
 
僕はどうしても自分で野菜を作ってみたくなって、吉祥寺の店をたたんで地元埼玉に戻ってきました。
 
店を辞めてほどなくのろに呑みに行ったら、加藤さんこんなこと言ってました。
 
「いや、びっくりしたよ。まさかお前がそっちの方向に行くとはなぁ。ま、わかるけどな。でも大変だぞ」って。見透かされてます・・・・。
 
実は加藤さん、店を始めた1976年当時、並行して自然食の物販店もやってたんです。八百屋さんですね。
 
のろの正式名称は「らいふはうす のろ」なんですね。ライブハウスじゃないんです。面倒臭いけど(笑)。そういうこと。
 
 
加藤さんもいろいろあって南口の慣れ親しんだ店を閉めて
 
今は北口で同じ名称で小さな店を営んでいます。
 
 
前の店と変わらないのは
 
相変わらずイチゲンさんは入りづらいというところ(笑)。
 
でもね。
 
そのハードルが低い店って面白くないんだよ。
 
 
僕の店もそうだったけど、あえてそうしてたんだけどさ
 
それを乗り越えてくる人には人生変えるくらいの出会いがあるよっていうことを知ってもらいたいんです(笑)。
 
ここまで読んでいただいた方々
 
吉祥寺に長く関わってたらのろは欠かせませんからね。
 
「あ、随分行ってないな」と思われたら、加藤さんの顔を見に新しい場所へ行ってみてくださいな。
 
行ったことのない方。
 
「へ~っ、面白そうだな」
 
と思われたら、とりあえず行ってみてください。あとは自分で判断してください(笑)。
 
 
ハバナの木下さんのブログ見て来ました」って言ったら、多分優遇されると思います!!・・・って、加藤さん頼みますよーーーー(笑)。
 
入口のドアを開けるまで中がまったくわからないお店ですが、NHKBSで店の内部を盗撮した映像がありますので是非。facebookからのリンクなので観れないかもしれないですが。
 
 
 
*********************
 
先週、久しぶりに上京してのろに呑みに行ったんですよ。
 
久しぶりにハバナの常連達を呼び出して楽しかったです。
 
ちなみに息子の大学合格祝いも兼ねてたんですがね(呑み屋でお祝いされる未成年ってね(爆笑))。
 
その前に三鷹のバイユー・ゲイトに立ち寄って、置いて頂いてた荷物を引き取りに行ったのです。予想以上にでかくてね。
 
呑み始めの時は「加藤さん、絶対終電までには帰りますよ!」(ちなみに吉祥寺から現我が家までの終電は23時7分)
 
って言ってましたが、想定通り帰れず朝まで呑み。
 
 
で、その荷物も
 
 
「木下ー!!酔っぱらってるから絶対その荷物電車の中に忘れるぞ!!危ないから置いていけよ。また取りに来ればいいよ」
 
 
「あ、加藤さんすみません!!そんなに気を遣っていただいて・・・お言葉にー甘えますわー」
 
 
ということで
 
また近々に吉祥寺に行かなければなりませぬ。
 
 
多分、これははめられたんでしょう(苦笑)。
 
大喜びではまりますが。
 
また呑みに行きますねー。
 
みんな集合!!!




 
 
懐かしい写真がでてきたのでアップします。


店をやる前、多分1993,4年くらいのもの。

南口の、のろで高田渡さんが当時のバンド仲間「拓夫」の60年代のギブソンB-25をおもむろに取り出してジョン・ハートギター講座になった時のスナップ(笑)。
 
イメージ 1



当時のバンド「大黒屋」で出演したのろライブの一コマ。


珍しい僕のギターソロの瞬間画像。

当時愛用していた1959年製ギブソンE-345は懐かしいなぁ。売っちゃったんだよな。


僕、ソロ弾くの好きじゃないんです。バッキングこそ命。

だから相当珍しい。どうでもいいけどね(笑)


イメージ 2


同じくのろのライブ。

ボタンアコーディオン弾き始めの頃。

とにかくよく分かんないで弾いてた。

イメージ 3

今は随分構造が分かってきたので楽になったけどさ、弾く時間がないんだよ(涙)。

バンド、またやりたいなぁ・・・・・