ミー
考えてみたら、実に不思議な2ヶ月間だった。
幻だったんだろうか?って思ったり。
でも、それは現実なはずで
僕の2ヶ月はほぼそれにかかりっきりで
そう、そいつは突然現れたんだ。
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畑や田んぼが多いうちの周辺には現在10匹くらいの野良猫が生息していて
周辺の何件かの農家はエサをあげてたりする
うちの庭もいろんな猫の通り道
野良猫の顔も大体覚えるもんだ。
おーい、元気でやってるか?
そんな感じでつきあってきた。
出汁を取り終えた煮干しは、野良猫のご褒美に外に出してあげてたので、それで通り道になったのかも。
東京にいるときに僕も猫飼ってたのでね。大好きなんですよ、猫。
そんな感じで野良猫とつきあってきた。自分なりに、ね。
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6月の頭だろうか
見慣れない子猫がうちの庭にやってきた
生後3ヶ月くらいの黒猫
周囲に黒いのはいなかったから「あれっ?」って。
近づいても触ろうとしなければ別に逃げるわけでもなく、こっち向いてミャーミャーと
それが10日ほど続いた。
ある日、ゲリラ豪雨が来るということで、その小さな黒猫の事を思い出した。
「さすがに逃げ場がないときついだろうな」と
庭にある物置の引き戸を少し開けておいたのだ。使ってない毛布を中に入れて。
豪雨が去った翌日の朝、玄関を開けて庭に出てみると
物置のその隙間から、小さな黒い塊が勢いよく飛び出してきた。
こっちを見据えながら「ミャーミャーミャー」と甲高い声。
しょうがないよ。迷わずエサを買いに行ったよ。
それが始まりだ。
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お腹がすくとふらっと現れてミャーミャー
満腹になるとどこかへ散歩
そのうち、庭でくつろぐことが多くなった。
毛づくろいとか、お腹だしてゴロゴロしてたり
ある日気がついた。
「乳首出てきて、張ってないか?」
メスだった。
ネットで色々調べたが、結論としては妊娠している可能性が高い、と。
ちなみに猫は物凄く繁殖力が高い動物で、妊娠から出産までは約2ヶ月だそうで。
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どうするかは置いといて、とりあえずは動物病院に連れて行かなければ。
しかし、こいつは野良猫なのである。
その時点で一切身体に触れさせてくれないのだ。手を伸ばすとさっと逃げてしまう。
地道な戦い。餌をあげるタイミングでちょっとづつ触れ合った。
絶対に止めとこうと思ってた家の中にも入れるようにした。
黒猫を抱きかかえられるようになるのに2週間以上。
その間にも目に見えてお腹は大きくなって、乳首はますますピンク色になっていったのであるが。。。
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ようやく近所の動物病院に連れていけたのは7月の後半。
野良猫との向き合い方をいろいろご指導して頂いた。
その後、近所で猫に餌をあげてる家にもご挨拶に行った。
その家の飼い猫だったら嫌だったので、ね。
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ご挨拶にいった餌をあげている家では、できる限りは自費で避妊手術はしてるのだが「間に合わない」場合
「行政の指示」に従っているそうだ。
まぁ「殺処分」です。
「だって無理だよ。増え過ぎちゃうんだからさ。面倒見れる、あんた?」
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ここではこの問題について詳しくは書かないけど
地方自治体によって野良犬野良猫への対応は様々である。
埼玉県は相当遅れてるって言わざるを得ないかな。
調べればすぐわかるから、興味がある方は是非いろいろ検索してみてください。
こういう身近な問題に対してどういう対応をしているのかが本来の「政治」なんだよって
最近凄く思ってます。
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とにかくだ。
気持ちは固まった。
殺処分はさせない。ここで生ませる。母子ともにまずは命を守る。
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8月2日の深夜。日をまたいで3日の1時くらいかな。
居間の雨戸の向こうから声が聞こえた。
餌をねだるいつもとは全然違う訴えるような鳴き声
これはただ事じゃない、と急いで玄関を開けて彼女を迎え入れた。
餌を食べ、水を飲み
いつもならそれで落ち着くのだが、その後彼女は家の中のあらゆる場所をうろうろし始めた。
約3時間。多分、産む場所を探していたのだろう。
かとおもうと近寄ってきて僕の指を舐めまわしたり、甘噛みしたり。普段やらない行為だ。
覚悟はできていた。気に入った場所で生ませようと思ってた。
朝の4時くらいだろうか。彼女は玄関で外に向かって鳴き続けた。
玄関の引き戸を開けると、暗闇に消えていきそのまま戻ってこなかった。
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軽く寝てから朝、外に出た。
いつもは玄関を開けると餌欲しさにすっ飛んでくるのだが、その日は結局姿を現さなかった。
どこか居心地のいい場所を探して無事に出産してますように。。。。
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8月4日
朝起きて、いつものように玄関を開けた。
すると
いつものように、小さな黒い塊が飛び出してきた。
ミャーミャーミャー
物凄い勢いで餌を食べ始めた彼女はゴロゴロと僕に甘えてきて
それに飽きると屋根に上って毛づくろいしたり
でも物凄くスリムな体形になっていて身軽に飛び回ってるのだ。
え?産んだの??それとも丸一日餌を食べなかったから痩せたの??
一通り遊び終えると、彼女は家の裏に向かっていって
空き家になってる隣の家の空調機の隙間の草むらに潜り込んだのだ。
恐る恐るそこを覗き込んでみると
そこには、か細い声で鳴く5匹の子猫と、それを大事そうに抱え込む彼女がいたんだよ。
なんだか不思議と涙が出てきちゃってね。。。。。
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子猫が乳離れするのはおよそ1ヶ月ちょい。大体2週間で目を開けるようになって、そこからはウロウロと動き出すらしい。
野外は危険がいっぱいだ。カラス、車、考え方が違う隣人。
子猫は里親を探すつもりだった。
親猫は乳離れしてから避妊させて、今考えられるのはそこまで。
僕が飼えればいいのだが、今の埼玉の環境下にずっといる訳でもなく
店を再開したら、ほぼ寝るだけに帰る狭いアパートに野良猫出身を居させるのは彼女にとって幸せなんだろうか?
そこがずっと引っ掛かってた。
何人かの友達に里親相談をした。
以前飼っていた、大好きだった黒猫オサム君を世話してくれたトリマーのM女史が、保護活動をしている動物病院の先生を紹介してくれた。
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8月11日
親猫を含む計6匹を先生に保護して頂いた。
子猫はともかく、あんなにキャリーバックに入るのをおびえてた彼女が
ビックリするほどすんなりと入ったんだよね。
野良猫が保護されて、今まで好き勝手やってた奴が屋内で大丈夫なんだろうか?
でも、その後先生から送ってもらった写真の彼女は
僕が見たこともないくらいな、とてもリラックスしてストレスフリーな表情なんだよ。
あいつ、僕の前に出てきてからこうなるのわかってたのかもしれないな。
腹立つな(笑)。
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これが僕のこの2ヶ月間で起きた一番の出来事。
ほぼこれ。
保護してもらうまで、子猫5匹の命を繋げることができてホッとしてる。
今でも朝起きて彼女の姿を探してしまう。
いわゆる「ロス」なのだが(笑)
それも僕の問題なのでね。時間と共に超えていかなければならないことだけ。
彼女のファミリーが、とにかく穏やかにこれからを過ごしてもらいたい。
それだけです。天から与えられた人生(猫生か)を全うしてね。
相談に乗ってくれたM、保護して頂いたH先生
本当にありがとうございました。そしてよろしくお願いいたします!!
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地元の動物病院に連れて行くとき、問診票に記入しなければならないので
「ミー」と名付けた。
たった2ヶ月だけだったけど
家族だったなぁ。