絵文字に死す
近況報告。
3月14日をもって、某ネット通販巨大倉庫の仕事を退職しました。
と言ったら聞こえがいいが、実際は「クビ」みたいなもんだ。
そのいきさつをちょっと書いてみたい。
長いよ(笑)。
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派遣会社から仕事のシフト希望は2ヶ月前に提出することになっている。
僕は1日11時間拘束なので週4日の勤務。日曜日から水曜日までの夜勤である。
シフト確定の連絡はすぐ来るのだが、実際は全然違うのである。
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その某有名なネット通販企業が(もう言わなくてもわかるよね)一番重要視するのが
「生産性」ということらしい。
どういうことか。
要は一切の無駄を省きたいのである。
具体的に言うと
その日の物量に合わせて働く人数も調節する
ということだ。
2ヶ月前にシフトを決めたにも関わらず、変更要請は日常茶飯事。
一応「自慢」のAIを使って月間予測なんかも作るんだろうが、それに合わないときは働いてる場所まで来て「明日お休みにご協力していただけますか?」なんていうこともしょっちゅうである。
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僕の3月のシフトも直前で変更になった。
それも変更要請の電話が来たのが休日の夜中23時・・・・。
強力な力を有する元請けに翻弄される弱小派遣会社の立場も分からんでもない。
でもな。さすがに常軌を逸してるというか
感覚が麻痺してるんだろうな。普通は23時に仕事の電話を掛けないでしょうよ。
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その前の週も「金曜日が物流多いので、出て頂けますか?」
というのでシフト変更したのだが
前日の木曜日に「思ったより少ないので休んでください」だって。
わかってるとは思うけど、派遣の我々は時給で働いているのである。
「休む」ということは「お金が入らない」ということなのである。
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相当むかついた前週の伏線があっての3月14日の月曜日なのであります。
いつものように19時から仕事に就き、一回目の休憩時(21時45分)にラインをチェックすると派遣会社からメイルが入っていた。
(原文のまま)
お疲れ様です。
木下さんお世話になっております☆
明日3/15(火)お休み募集をしております。
ご対応頂ける場合は25時までにお返事くださいm(ーー"m)
よろしくお願いいたします!
・・・・・・・おい・・・・今週もかよ・・・・・
さすがに頭にきてね。それも星マークに絵文字だぜ。
ふざけんなよ・・・・・
こりゃもう無理だな。とりあえず明日は休んで、後日辞職を伝えよう
なんて思いながら2度目の休憩に入ったのが夜中の0時15分。
またメイルが入っていた。
(こちらも原文のまま)
お疲れ様です。
先程のお休み募集の件ですが充足いたしましたので、明日は予定通りの出勤でお願いいたしますm(--"m)
またも絵文字攻勢・・・・
心がキレました、わたし。当たり前だよね。
すぐに返信する。
「明日は休みますので」
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すると約5分後に倉庫に常駐している派遣会社の人が僕の所にやってきた。
これも凄いんだけどね。
なにせ東京ドーム2個分の面積を有する巨大倉庫の中で、一発で僕の居所がわかるんだから。
多分常備しなければいけないIDカードの中にGPSが入ってんだろうね。
怖いよ。。。本当に怖い。リアル「1984」だよ。
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「木下さん、この度はいろいろご迷惑おかけしてしまって本当に申し訳ございません・・・・」
謝ってくる担当の若いお姉ちゃん。
でも次には両手をごねごねして
「あ、それで・・・明日・・・・何とかなりませんかね???」
懲りてない。というか何も響いてない・・・。
さすがに言ってしまった私
「いや・・・・、もうこういうのキツイんすよね。振り回し過ぎでしょ?
こっちも生活かかってんだからさ。これじゃちょっとやってられないよ」
するとその女史、間髪入れずにこう言ったのだよ。
「あーーーーわ・か・り・ました。では今から退職届の書類を持ってきますので、必要事項を記入してください。はい。すぐに持ってきますから」
瞬殺
まさに瞬殺
木下聡之56歳
絵文字に葬られる・・・・・・
ジ・エンド
完
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ということで5ヶ月に渡る私の「潜入レポート(byハッチ・ハッチェル)」は終りを迎え、またしても無職となりました。
とりあえずね。自分のことは置いておいて。
日本ていう国は、いや「も」か。
とんでもないことになってるんだというのを肌で実感したこの5ヶ月でした。
因みにここの職場、最初は短期募集(2ヶ月)で時給1600円だったかな?
埼玉県で多分最高時給で人を集めながらそれ以上の勤務を希望する人は3ヶ月以降は1100円になります。
凄いトラップだよね。で、さっき言ったように雇用が保証されてるわけではない。
みんなが利便さを追求する裏にはこういう異常な労働体系があるのです。
という僕もプライム会員なのだが(涙)。
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その前に働いてた工場も大して変わらない。
派遣は基本的に2ヶ月ごとに契約更新だった。
つまりいつクビになってもおかしくない状況にある。
でも3年以上そこで働くと派遣から会社所属の「パート」扱いになることができる。
雇用は保証され、福利厚生、ボーナスもつく。
でも時給制。それも金額は埼玉県が定めた最低保証賃金となる。960円だったかな?
トータルで計算すると、年収はかなり下がる。
それでもおばちゃんたちは
「仕事があるだけありがたいよ」って
黙って受け入れている。
どうなんだろうな、そういうのって。
因みにその会社は社員だけで2000人近くいるのに
なんと労働組合が存在しないのだ。
これ、相当まずい会社なんだけどさ。そういうのが普通に存在してしまうのが今の世の中なんだなって。
今の「連合」とかみてるとなんも期待できないもんね。
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雇用が保証されない、いわゆる「非正規雇用」が就労人口の4割を占めている今の日本。
本当は労働者が立ち上がらなきゃいけないんだけどさ
さっきの派遣会社の社員もそうだし
パートのおばちゃんもそうだけど
みんな麻痺しちゃってるしね
世の中を俯瞰で見れる人が現場に居ないんだよね。
今置かれた自分の立場を守ることで精いっぱいでさ。
しょうがないのかもしれないけどね。生活があるから、みんなさ。
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僕の周りには
そういった現在の社会システムを上手く理解し利用して、いい塩梅で自分の居場所を作ってる人たちがいる。
それは本当に僕にとってはうらやましいことで
何故って、僕は全くできないから(涙)。
「この世の中はおかしいんだ!!!」って14歳くらいからずっと叫んでた実はパンクな(笑)自分にに何ができるのかって
実は何にもできないんだよ。当たり前だけど。
革命なんてもうないからさ。幻想だから。
インターネットは革命だけどね、本当に。
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27歳でサラリーマン生活に見切りをつけて
やりたいことだけやろうと呑み屋を始めて20年やった。
でもさ、呑み屋っていう環境もかなり特殊なところでね
いろいろニュースみても現実感がないっていうか
辞めて6年経って経験したことは
つまりニュースとかで言われてるリアルな貧困をちゃんと経験したっていうこと
だって
やりたくない仕事を一生懸命やってもさ
僕がもらった平成元年入社時(34年前)の初任給を超えないんだからね。
それまでの人生の経験は「派遣」では全く問題にはならないのですよ。
ただの道具。でもそれ以外は田舎では仕事ないんだよね。
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でもさ
そういうのを経験してよかったんだよね。
僕の「深み」は出てきたと思いますよ(笑)。
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ということで
僕の現場リポートは終り。
さて、これからどうしようか?
、と思った時にね
友達の顔が浮かんだんだよな。
知らないけどさ
多分、若い時に同じようなこと考えて
なんかそのままきちゃった奴ら。
それはそれは壮絶でさ
そんなの言わなくてもわかるけど
そいつらと今喋んないと
って突然思って、電話してね
旅の日程が決まりました。
29年ぶりの旅です。
結果、最高でした。