2012・1・17 鈴木常吉&中尾勘二

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レポート・アップするのが大変遅くなりました。。。。申し訳ございません!!
1月17日に行われた、ハバナムーン・ライブ「唄は元気だ」Vol.11鈴木常吉さん&中尾勘二さんライブを。

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「唄って、ナマモノだな」って改めて思った、そんなライブでした。

去年の8月の桜井芳樹さんと
そして12月の忘年会ライブではスーマーと
今回は、中尾勘二さんと
ハバナ3回目の出場の常さんです。

当たり前のことなのだが、同じ曲を同じ場所でやっても、一緒に演奏する人の組み合わせによって常さんの唄は全然違う顔を見せる。
 
まぁそのときの酒量も多分に関係するとは思いますが(笑)。

一度たりとも同じ顔を見せない。だから常さんの唄は見逃せない。

そういう場面にたくさん遭遇することによって、その唄が持ついろんな側面を知り、唄が育っていくのを感じ
 
そしてその核心に近づいていく気がする。

桜井さんとの時は、お互いのエネルギーがいくつも重なり合い、あらぬ方向へ導いてくれて、その曲の新しい局面を見ることができた。
 
スーマーとの時は、ぶっつけ本番の初めての顔合わせということもあったのか、常さんが引っ張っていくことによってざっくりとしたその唄が持つ言葉の質感を感じることができた。

今回の中尾さんとの時は
 
常さん自身が「中へ中へ」と入っていく感じがした。
 
自分がこの世に産み落としたメロディがついた言葉がどういったものだったのか、
それを常さんが噛みしめながら、もう一度、今この場に落としていく感じに僕には思えた。
 

唄っていうものは不思議なもので
 
作る人がいろんな思いを持って生み出すのであるが、
 
出来上がった瞬間、人前に出した瞬間に
 
それは作者のものであると同時に
 
聴いた人のものでもある。

だから作者の意図どおりにそれが伝わらなくても、それはそれでいいことであって。

でも、作者がどういう気持ちで生み出したか、そして歌い継いでいるのかを知ったり感じたりすることは
その曲の本質を知ることで大事なことだと思っている。
 
そこからまた唄の新しい魅力を発見できるから。
 
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この日、常さんはアコーディオンを抱えて渡さんの「夕暮れ」を唄った。
 
渡さんが「夕暮れ」を生み出した背景を、僕は本人からこんなふうに聞いていた。
 
「これはね、僕の中では銀座ライオンの風景なんだよね」
 
渡さんがこの曲を唄うとき、僕はライオンのあの風景を頭の中に描いていたのだ。

常さんが唄う「夕暮れ」は
 
銀座ライオンではなく、もっと雑多な風景だった。
 
そう、赤提灯が燈る北千住の飲み屋横丁だったり
坂の先がオレンジ色に映る時の谷中銀座だったり。

どちらが正しいっていう話ではない。
 
唄というものがこの世に生み出されて、いろんな人が唄い継いで、いろんな風景を運んでくる。
そういう唄は僕には素晴らしいものであり
 
別の風景を描ける唄うたいは僕には素晴らしいのだ。
 
 
 
一応世間での代表曲(笑)「思ひで」を唄う前に、常さんはこうコメントした。

「この曲はね、篠田のこと唄ったんだよな。そんなに仲良くなかったけど、というか仲良くなった途端に死んじゃったんだけどさ。

でもさ、身近な友達が死んじゃうの、初めてだったんだよな。そんな曲だったんだけどさ。別に歌舞伎町の夜景なんて関係ないんだよなぁ・・・・(笑)」
 
そうやって聴く「思ひで」は
 
直接お会いしたことはないけど
僕自身大好きだった篠田さんのあの姿を思い出して
 
その日の「思ひで」はなんか特別だった。
 
唄の新しい魅力の発見だったのだ。

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篠田昌已。サックス奏者。じゃがたらのメンバーで、その後ちんどんの「長谷川宣伝社」(埼玉は妻沼のちんどん屋。熊谷生まれの僕が幼少時に接していたのはまさにこのちんどん屋であった!!)に入団、後に自身のバンド「コンポステラ」を結成し、日本のジャズ界に革命を起こした人。
 
そのコンポステラのメンバーの一人が、今回一緒に演っていただいた中尾勘二さん。
 
そして常さんのソロ・ファースト・アルバム「ぜいご」のプロデューサーでもある。

中尾さんの音をナマで聴くのは10年ぶりくらいかもしれない。
桜井さんと演っていた「ストラーダ」をよく観に行っていたのだが、そのとき以来だ。

久しぶりにナマで聴く中尾さんの音は、以前にも増して物凄いことになっていた。

必要最小限の音数と音量。
 
でも、とことんまでそぎ落とした暖かい音色は
それがないと成立しない究極の色どりを常さんの唄に添えて溶け込んでいたのであります。
 
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中尾さん、ホント大好きです(笑)。
 
もうセッティングの時から凄かった。
「中尾さん、マイクはどうします?」
「あ、僕マイクいらないですから。聴こえない場所で吹きます」
と。
で、選んだ場所も、奥の座敷の
カウンターのお客さんから姿も見えない場所でした(笑)。
 
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終演後、常さんと呑んでいて、こんなことを言ってました。
 
「中尾君は凄いよ。フレーズもレコードと変えないし。でもさぁ、半年に一回くらいしか演らないけど、リハもなんにもしないのに全部覚えてんだよな。

それはその曲に対して自分が選んだ一番いい音なんだよ。聴こえるか聴こえないかくらいのところだけど、中尾君と演るときはあれがないと俺の唄は成立しないんだよな」
 
「ぜいご」という名作を生み出した二人の、揺るぎない信頼感なんでしょうね。
 
「望郷」のプロデュースは桜井さん。
 
どちらもアプローチは違えど、常さんとの信頼感によって成り立っている素晴らしい作品です。
 
 
 
ライブ前は、常さんが気がつかないほど座敷の奥で存在感を消しまくっていた中尾さんですが(笑)
 
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座敷で吹いたので、壁が近くて反響音が気持ちよかったのか
 
終演後はお客さんと楽しく談笑しておりました。
 
中尾さん、お喋りオモロいです(笑)。
 
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今度うちで中尾勘二ソロ・ライブ演ってくれないかなぁ~・・・・・
「お座敷10人限定ライブ」をやりたいっす!!!

というわけで、この日は寒い日の熱燗のように隅々に染み渡る素晴らしいライブでした。

お二人も久しぶりの共演で楽しそうでした。
 
これは1部後の休憩中のショット。
 
絶対演奏の話なんかしてないところがいい(笑)。
 
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P.S.
 
「ここからは俺の本領発揮!」
 
と唄い始めた終盤

最後の「厄病の神」は
僕にはまるで極上のサザン・ソウルだった。

魂の唄はマスル・ショールズ+ジェリー・バトラーの夢の組み合わせのようだった(そんな組み合わせあったっけ?)。

その魂の叫びに
 
観に来ていた友人のZッキーは
まるで犬みたいに
 
酩酊の中、心のなにかが反応して
 
常さんの唄より大きな声で
 
 
♪ウォオ~!ウ・ォ・オ・オ・ォオ~~♪
 
って叫んでた。
 
まさにゴスペルのコール・アンド・レスポンス
 
というか
 
レスポンスがコールを超えていたが(笑)
 
 
後日、本人は何にも覚えていないことが判明。

挙句の果てにこのお姿。。。。。。。
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いやはや
 
唄は「ナマモノ」だなぁ~。。。。。。。。。