
2006年に発売された常さんの初ソロアルバム「ぜいご」です。
裏ジャケの絵が、たまらなく好きです。

常さんには唄いたいことがあるのだ。
そんなアルバムです。
池袋の昔の文芸座のションベン臭いトイレで用を足して、さっき観た映画の余韻に耽るまもなく繁華街へ放り出されたとき
蕎麦屋でおちょこに酒をついで、一番奥の席から入り口の外に流れる光景をぼんやり眺めてるとき
川原に腰をおろして、向こうを走る電車の音と風に身を置くとき
夕焼けがかった台所で包丁を研いでいるとき
担ぎ上げられたり、裏切られたり
忘れられたり
そうやっているうちに
独りになって
毎日の何気ないことがとてもいとおしくなる
だから
常さんには唄いたいことがあるのです。
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そんなことを僕は考えながら、今日もこのアルバムを聴いてます。
いや、なにも考えてないかもしれない。
一日の仕事が終わって
一杯の酒を注ぎながら
ただただこのアルバムを聴く。
普段酒を飲むとき
僕は「無音」なのだが
「ぜいご」と「望郷」はいつもそばにある。
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アイリッシュ・トラッドのメロディに身を委ねたあとに出てくる唄が好きだ。
お茶碗ひとつ、箸二本
鍋の中にはゆで卵
洗濯物を干した後、一人でゆっくり食べました
白身のなかには丸い黄身
外では落ち葉が風に舞う
鍋の中にはゆで卵
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実は今朝、夢を見た。
「ぜいご」をかけながら横になっていたら寝てしまったのだが。
「お茶碗」の最後の咳までは覚えている。
そのあとはどうやら夢の中だったようで。
僕は歩いている。
眠くて目が開かないのだが
壁を触りながら前に進んでいる。
そのうちに一人のオバチャンに支えられて
「向こうだよ」
って言われて夢の中の僕が目を覚ました。
朝早いというのに景色はうす暗くて
でも元気な小学生たちがこちらにむかって笑顔で登校している。
そのうちに見覚えのある店が右側に現れて
僕は行き過ぎてしまったことに気がついた。
戻ろうとすると
今度はまた戻りすぎてしまったことに気がついて
ようやく目が覚めた。
時計をみるとたかだか40分しか経っていなかったのだが
手には「ぜいご」のジャケットを握りしめていたのだった。
なんだろ、あの夢・・・・・・・・・