20日(土) 物質社会に生きること

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お客さんで若手のS君が「好きだ」というので、ひさしぶりに聴いた、ジョージ・ハリスンのソロ4作目の「LIVING IN THE MATERIAL WORLD」です。73年5月発売。
 
3枚組みの大作「ALL THINGS MUST PASS」から母の死、バングラディシュ・ライブを経て2年後に出されたこのアルバムは、フィル・スペクターから離れ、自宅の豪邸「フライヤー・パーク」での毎日の瞑想から導き出したかなりスピリチュアルな作品である。歌詞は傾倒していた宗教「ハレ・クリシュナヒンドゥー教)」の影響ありあり。その立場から普遍的な「愛」を音に結実した作品。
 
ジョージ・ハリスンの個性はこの作品であるひとつの形になったと思う。もちろん前作も素晴らしいが、ビートルズ時代から晩年に至るまでのキャリアを考えると、これがターニング・ポイント。
 
特徴
 
その1:自らの宗教観からによる普遍的な愛を模索する歌詞。そしてモンティ・パイソンを敬愛するシニカルないかにもイングランド人らしいものの見方(このアルバムはいくぶん押さえられているが)。
 
その2・12弦ギターの有効活用。ビートルズ初期はリッケンバッカーのエレクトリック・サウンドを生かしていたが(これはTHE BYRDSやTHE MONKIES、THE BEACH BOYSに多大なる影響を与える)、ソロ活動以降は「HERE COMES THE SUN」のようなアコースティック・ギターの12弦サウンドに移行する。
 
その3・スライド・ギター。もはや「ジョージ節」としか説明できない素晴らしいサウンド。最初のアタッキング音、初期音からフレーズ音に至るまでの音程の幅の広さ、音の切り方は独特である。スライドはビートルズ解散後からの彼のトレード・マークだが、僕はエリック・クラプトン経由でのデュアン・オールマンの影響を凄く感じるのですが、どうでしょうか?
 
ちなみに僕の生涯渾身のジョージ・スライドはジョン・レノンの「GIVE ME  SOME TRUTH」とビートルズ「再結成」時の「FREE AS A BIRD」のソロ。機会があったら聴いてみてください。
 
その4・ディミニッシュ・コードの多用。これぞジョージの真骨頂。ジョン、ポールという稀代の作曲家が存在したバンドの中で、彼が自分自身の個性を打ち出す活路がこのコードだった。最初は66年のリボルバーに入っている「I WANT TO TELL YOU」かな?
 
最初はこれ見よがしに使っていたが、このあたりまで来るとすっかり自然に馴染んでいます。これ、ジョージを知る上で大事なキーワード。楽器を弾く方、バンドをやっている方、是非研究してみてくださいな。
 
このアルバムで大好きな曲は「DON’T LET ME WAIT TOO LONG」かな?
 
バングラディシュ・コンサートで懇意になったであろう、ジョンのソロ時代をがっちり支える飲み友達、ジェシエド・デイヴィスは「SUE ME、SUE YOU BLUES」を自身のアルバムでカバーしている。
 
こちらも素晴らしいのでS君、是非聴いてみてスワンプ・ロックに目覚めてください(笑)。
 
これは当然UKオリジナル盤で所有。UK盤は音粒が細かくてホントに好きな音です。