望郷

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「牧野伊三夫」という絵描きがいる。
 
もう15,6年の付き合いだ。
 
前の南口の店の入り口の壁画を描いてくれた。
 
先日所用があって
 
久しぶりに連絡を取った。
 
5年ぶりくらいに話をした。
 
随分久しぶりだというのに
 
話題はこの「望郷」のことだった。
 
「いや~いいんだよね。酒飲んで『望郷』に身を委ねてるよ」
 
こんな的確な言葉もない(笑)。そういうこと。
 
 
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前にも何度か取り上げている本で
 
E・アニー・ブルーの「アコーディオンの罪」というのがある。
 
シシリー島で作られた一台の緑色のアコーディオンが、ニューオーリンズ経由でいろんな移民たちの手に渡り
 
そのアコーディオンを巡った数々の市井の物語。
 
 
 
常さんの声もアコーディオンの音色のように
 
消えるでもなく
 
主張するわけでもなく
 
でも
 
そこに「物語」を紡いでいる。
 
 
 
プロデュースは桜井さん。
 
このアルバムの肝は
 
唄を生かすための
 
「低音からの解放」である。
 
昔のサンバが素晴らしく自由に広がって
 
無限の悦びを与えてくれたのは
 
2オクターブも下のベース音に縛られていなかったから。
 
 
そして本当に唄を大事にする低音奏者は
 
「音を出さない意味」をわかっている人である。
 
 
そんな音だからこそ
 
常さんの声は
 
緑色のアコーディオンのように
 
 
飄々と物語を紡ぐことが出来るのだ。
 
 
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大傑作。
 
短さもいい。
 
当時小学1年生の僕が知る由もないが
 
渡さんの「系図」がリリースされた時に
 
みんなはこんなふうに身を委ねていたのかな?
 
でも
 
そのくらい
 
このアルバムと同時代に居合わせることが出来る僕は幸せなのだと思う。
 
 
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人生とは
 
クローズ・アップで観れば悲劇だが
 
ロング・ショットで観れば喜劇である
 
 
Life is a tragedy
 
When seen in close-up,
 
But a comedy in long-shot.