「ELVIS」鑑賞

話題の映画「ELVIS」鑑賞。

エルヴィスデビュー、ロックン・ロールの誕生を録音した伝説のメンフィスの「サン・スタジオ」

エルヴィスが母親のために購入した家「グレイスランド」

そしてエルヴィスが200曲以上録音したナッシュヴィルの「RCAスタジオB」

1988年に初めてアメリカを訪問した1ヶ月の旅は、前半はニュー・オーリンズ・ジャズ・フェスに費やし

後半はまさにエルヴィスを辿る旅だった。

まぁそういう訳で観ないわけにはいかない映画(笑)。

 




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正直な感想は

「TOO MUCH」

ですな。

詰め込み過ぎ。映像も音も隙間なし。

とにかく疲れました。2時間半くらいあるし。

地方のシネコンは大音量かつ無茶苦茶音が良くて、お客さんも少ないからいいんだけど

今回はそれが仇になったかな。

特に前半は映像の切り貼りが物凄くて

音も過度にエフェクティブで押し寄せてくる感じ。

音圧が凄すぎて久しぶりに途中で寝たな。音に圧があって隙間がないと眠くなるんですよね(笑)。

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エンドロールがまた異様に長い。

5分くらいあったかも。

その間かかっていた音楽は、エルヴィスの曲をラップ調にリメイクした僕が知らない人ばかり。

この監督、ヒップポップ・カルチャーの人なんだろうな。

そう思うと、映像も音響もなんとなく合点がいきますな。

バズ・ラーマン監督の作品「ムーランルージュ」「グレイト・ギャッツビー」も観たことないのでね

でも相性悪そうだな、僕と(笑)。

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どうしても「音楽」の方から入ってしまうので

トム・パーカー大佐を通したエルヴィスを題材にしたハリウッド映画を

思う存分楽しめなかったというのが正直な感想です。

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とはいえ、凄いところも満載で

トム・ハンクス演じる大佐は、本物の30%増しくらいな感じで喋り方がそっくりだった(笑)。

若きB.Bキングも「ウワッ!!」って。まさに。

リトル・リチャードは美化しすぎかな?

でも、あんなに顔がでかい俳優なんて探せないだろうな(笑)。

エルヴィス役のオースティン・バトラー

顔は全然似てないけど、身長がご本人とほぼ一緒らしく

ギターとの収まりが全く違和感なかった。

歩き方とか、凄く研究したんだろうな。

そういった意味じゃ「ボヘミアン・ラプソディ」よりも再現性は高い映画かもな。

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伝記的な音楽映画って難しくってね。

もう既にあったものをどうやって切り取るかだから。

「ものまね」が上手いとかではないのだけれど

でも、音楽好きな人から見たらどうしても譲れないその人の特徴というのがあって

それをちゃんと捉えてないと映画にのめりこめないんだよね。

それを題材にしたスタッフの愛が感じられなくなっちゃうんだよな。

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で、ここからが今回の本題なのだが(笑)

この映画の「時代考証」について。

凄いですな。こだわりまくり。

1954年、最初にルイジアナ・ヘイライドに出演した時にエルヴィスが弾いていたギターは、RCAデビューのジャケットになってるマーティンのドレッドノート・タイプのギターではなく(D-28)、000ー18なのである。

トップ右下に貼られていたシールも完璧再現。

スコッティ・ムーアのギターもゴールド・トップのギブソンフルアコだし(RCAメジャー・デビュー後はナチュラルのボディになる)

ビル・ブラックのKAYのアップライト・ベースの白いバインディングもパーフェクト(現在本物はポールマッカートニー所有)

その後の「COME BACK SPECIAL」番組時もそうだし、インターナショナル・ホテル公演の各メンバーの立ち位置、ドラマー、ロン・タットのヘンテコリンなタムまでいうことなし。

この監督の音楽に対する尋常ではない愛を感じるのは

実はこういう些細なことなんですよね。

でもこういうのが物凄く大事なんだよな。

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バディ・ホリー物語」という映画が昔あって

とてもいい映画なのだが

後半のライブシーンの映像でバディ・ホリー役の人が弾いてるギターは70年代後半のテレキャスターなんだよね。

バディ・ホリー、50年代に死んでるし

テレキャスター、弾いてないしね。サンバースト、メイプルネックのストラトキャスターだから。

これだけで一気に興ざめですわな。

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1959年

バディ・ホリーと同乗した飛行機事故で亡くなったチカーノ・ロックの雄、リッチー・ヴァレンスを題材にした「LA BAMBA」という映画があって

ここでのバディ・ホリーが随分改善されてて(笑)

ちゃんとストラトを弾いてるしね。

でも、ソロとか結構モダンなスタイルでやりまくっててここも違和感だったかもな。

確か、その彼を主演にして「バディ・ホリー物語」のミュージカルをロンドンで長期やってたような気がする。

この映画、エディ・コクラン役で出演してたのがブライアン・セッザー。

まさに適役!!!と思ったのだが

途中からどうやってもエディの曲をカバーするブライアンにしか見えなくなってきたな(笑)。

でも、彼も相当努力はしてたのはわかる。

普段より短めのストラップでエディっぽくきめてるんだけど

だったらグレッチのギター、6120もフロントのピックアップはコクラン仕様のP-90にしてくれよ、とか思うのですわな。

そういうどうでもいい細かいところがさ

あの時代の音楽を愛してやまない人には物凄く大事なパーツなんですよね。

ちなみにこの映画の最大の欠点は

17歳で亡くなったリッチー。

役者、美男子過ぎだろ。

本物のリッチーは、ハンバーガー食い過ぎだろうな感じのその辺でうろうろしてそうなティーンです。

死ぬほど好きですけどね、私は。

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エルヴィスが亡くなったのは1977年。

僕が小学6年の時だけど、その日の新聞の様子は凄く覚えてる。

世紀のスーパースターだもんな。デカデカと載ってたな。

当時は糖尿病が死因みたいに言われてたような気がするけど。。。